「情報セキュリティ10大脅威」から想起される「運用に潜む隙」への現実的な対応策とは

この記事をシェア

IPAが公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が新たに上位へ浮上した。一方で、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃といった従来からの脅威も依然として上位を占めている。攻撃手法の高度化が注目される中、実際の被害の多くは、パッチ未適用や設定不備、バックアップ管理の甘さなど、日々の「運用に潜む隙」から発生しているのが実情だ。本記事では、こうした背景を踏まえ、企業がインシデント対応体制を構築する際に直面する課題を整理し、予防・検知・初動対応を包括的に支援し、現実的な選択肢となり得るCSIRTサービスについて解説する。

「情報セキュリティ10大脅威」から想起される「運用に潜む隙」への現実的な対応策とは

「運用に潜む隙」に起因するセキュリティリスク

2026年1月、IPAは「情報セキュリティ10大脅威 2026」を公開した。上位には、ランサムウェア(11年連続)、サプライチェーン攻撃(8年連続)をはじめ、標的型攻撃脆弱性を悪用した攻撃、内部不正など、毎年のように企業を悩ませてきた脅威が並ぶ。一方で、3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が新たにランクインした。生成AIの急速な進化を背景に、AIを悪用した攻撃の巧妙化・高度化が進んでいる現状が浮き彫りになった。

ここで注目すべきポイントは、攻撃手法が高度化している一方で、実際の被害の入口は必ずしも高度なものばかりではないという点だ。実際、被害事例の多くは、高度な攻撃そのものよりも、基本的なセキュリティ対策が適切に運用されていないことに起因している。つまり、問題は「対策を知らない」ことだけでなく、「対策を継続できていない」ことにあるのだ。

具体的には、更新作業や設定確認、ログ監視、バックアップの検証、アカウント管理といった日常的な作業が後回しとなり、その隙を攻撃者に突かれてしまう。こうした日々の抜け漏れこそが「運用に潜む隙」である。

具体的な「運用に潜む隙」と、それによる被害の例を以下に挙げる。

  • バックアップが適切に取得・管理されておらず、ランサムウェア被害から復旧できない(情報セキュリティ10大脅威1位に関連)
  • ソフトウェア更新を怠った結果、システムの脆弱性を突かれる(同4位に関連)
  • ソーシャルエンジニアリングの手口が従業員に周知されておらず、標的型攻撃メールからの侵入を許す(同5位に関連)
  • 放置された不使用アカウントが内部不正に悪用され、機密情報が競合他社や外部に流出する(同7位に関連)
  • リモートワーク対応で設置・追加したVPNやクラウド環境などの設定不備により、マルウェアの侵入を許す(同8位に関連)

これらの被害は、特別な攻撃手法だけが原因ではない。バックアップの取得状況を定期的に確認する、ソフトウェアを最新状態に保つ、設定変更後に問題がないか点検する、といった基本的な運用が継続されていれば防げた、あるいは被害を最小限に抑えられた可能性が高い。

従来のセキュリティ対策は「いかに侵入を防ぐか」に重点を置いてきた。ファイアウォール、アンチウイルス、メールフィルタリングなどは今も重要だが、現実には侵入を完全に防ぐことは難しくなっている。

その背景には、攻撃者のAI活用や自動化ツールの普及による攻撃手法の巧妙化がある。さらに、クラウドサービスやリモートワークの拡大によってIT環境は複雑化し、攻撃対象となる領域(アタックサーフェス)は拡大傾向にある。加えて、中堅・中小企業を踏み台に大企業を狙うサプライチェーン攻撃(同2位に関連)も増加している。自社の規模に関わらず、取引関係を悪用されて攻撃の入口にされるリスクは年々高まっている。

こうした状況を踏まえると、企業規模や業種を問わず「侵入を前提とした」視点が不可欠だ。すなわち、「防ぐ」だけでなく、「早く気づき、早く止め、早く復旧する」体制の構築が求められている。

継続的な監視と迅速な初動対応に焦点を当てたインシデント対応プロセス

サイバー攻撃による被害を最小化するには、予防だけでなく、監視や検知を含むインシデント対応体制の整備が欠かせない。中でも重要となるのが初動対応である。

インシデント発生時には、数時間、場合によっては数十分の遅れが被害拡大につながる。例えば、マルウェア感染を早期に検知できても、端末の隔離や通信遮断が遅れれば、社内ネットワーク内で感染が広がる恐れがある。

また、初動が混乱すると、経営判断も遅れる。どのシステムを停止すべきか、取引先への連絡のタイミング、外部公表の要否といった判断が後手に回れば、業務中断期間が長期化し、企業の信用にも影響を及ぼす。そのため、インシデント対応では、以下の3つのプロセスを継続的に機能させることが重要となる。

1)継続的な監視・運用

まず求められるのは、不審な振る舞いや攻撃の初期段階を早期に検知できる体制の整備である。端末、サーバー、ネットワーク機器、クラウドサービスなどから得られるログやアラートを継続的に確認し、通常とは異なる動きを把握する。

また、脆弱性や設定不備を定期的に点検し、セキュリティパッチを迅速に適用することも重要だ。運用・監視は、一度仕組みを導入して終わりではない。変化し続けるIT環境に合わせて、監視対象や運用ルールを継続的に見直す必要がある。

2)迅速な初動対応

次に重要となるのが、検知したアラートに対する初動対応である。セキュリティソリューションがアラートを出しても、それが本当に危険なのか、誤検知なのかを判断できなければ、適切な対応にはつながらない。

そのためには、アラートの監視・分析、トリアージ、脅威判定が欠かせない。検知内容や影響を受けた端末、通信先、関連ログを確認し、インシデントの深刻度を判断する。その上で、端末の隔離、アカウント停止、通信遮断、関係部門への報告など、必要な対応を迅速に実施する。

3)再発防止

インシデントを封じ込めた後は、原因と影響範囲を特定し、再発防止策を講じる必要がある。どの脆弱性が悪用されたのか、どのアカウントが侵害されたのか、どの設定に問題があったのか、従業員教育や運用ルールに不足がなかったのかを確認する。

再発防止策には、パッチ適用、設定変更、アクセス権限の見直し、バックアップ運用の改善、従業員教育、インシデント対応フローの改定などが含まれる。インシデント対応は、発生した問題を処理して終わりではない。得られた教訓を次の運用に反映し、組織全体のセキュリティレベルを継続的に高めていくことが重要である。

このようなインシデント対応の中核を担うのが、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)と呼ばれる専門チームである。CSIRTは、脆弱性情報の収集・分析、インシデントの検知・対応、社内外の関係組織との情報共有・連携、従業員教育、再発防止策の検討など、多岐にわたる役割を担う。

サイバー攻撃による被害を最小化する上で、業務中断期間をいかに短縮するかは大きな課題だ。CSIRTを設置することで、インシデント発生時の役割分担や判断プロセスが明確になり、迅速な初動対応と意思決定が可能になる。その結果、業務中断期間の短縮にもつながる。これは単なるIT施策にとどまらず、事業継続性(BCP)の観点からも、CSIRTの整備は欠かせない取り組みである。サイバー攻撃が事業継続上のリスクとなっている現在、インシデント対応体制の有無は、企業の信頼性や取引継続にも直結する要素となっている。

上場企業でも約6割がCSIRTを設置していないという現実

CSIRTは有効な対策である一方、多くの企業にとって導入や運用のハードルは依然として高い。KPMG社「サイバーセキュリティサーベイ2026」によると、調査対象となった国内上場企業424社のうち、89.1%が人員不足を課題として挙げており、CSIRTを設置していない企業は58.4%に達する。つまり、上場企業であっても過半数が十分なインシデント対応体制を構築できていないのが現状だ。

この結果は、セキュリティ体制の重要性が認識されていても、実際の運用には大きな壁があることを示している。特に深刻なのが人材の確保である。CSIRTの運用には幅広い専門知識が求められるが、こうした人材は市場でも不足しており、採用や育成には多くの時間とコストがかかる。

中堅・中小企業では、その傾向がさらに顕著だ。専門人材の確保や維持が難しく、IT部門の担当者が兼任で対応せざるを得ないケースが多い。日常のシステム運用や問い合わせ対応、端末・ネットワーク管理を行いながら、セキュリティ監視やインシデント対応まで担うのは大きな負担となる。

さらに、24時間365日の監視体制を自社だけで実現するには、交代勤務の体制、監視ツール、ログ分析基盤などの整備が必要であり、これらをすべて内製化するには相応の費用がかかる。加えて、インシデント対応はIT部門だけで完結しない。IT・法務・広報など複数の部門が連携するフローの整備や、継続的な運用も容易ではない。このように、CSIRTは設置すれば自動的に機能するものではなく、継続的な運用によって初めて効果を発揮する。インシデント対応の必要性を認識していても、実際に体制を構築し、維持し続けることが難しい点が、多くの企業に共通する課題となっている。

クラウドCSIRTサービス「セキュサポ」による体制構築

予算や人員が限られる中堅・中小企業にとって、現実的な解決策の1つがCSIRT機能のアウトソーシングである。自社ですべてを内製化するのではなく、専門ベンダーのサービスを活用することで、監視と対応の体制を迅速に整備できる。外部サービスとして活用するメリットは、人材不足を補える点だけではない。専門アナリストの知見、最新の脅威情報、豊富なインシデント対応経験を取り入れられることも大きな利点だ。

こうした課題に対応するクラウドCSIRTサービスの1つが「セキュサポ」である。24時間365日の監視体制、専門アナリストによる分析、インシデント対応支援を提供し、企業のセキュリティ運用を包括的に支援する。自社でCSIRTを構築する場合と比べ、初期投資や運用負荷を抑えやすく、リソースに制約がある企業でも導入しやすい点が特徴だ。主なメリットは以下となる。

1)即座に体制構築が可能

自社で人材を確保する必要がなく、不審な挙動の監視や初動対応について専門家の支援を受けられる。特に、セキュリティ人材の採用が難しい中堅・中小企業にとって、体制構築にかかる時間を大幅に短縮できる点は大きなメリットだ。

2)コスト負担が小さい

工数課金ではなく定額制のサービスであり、広範な対応が必要な場合でも追加費用を抑えやすい。自社で24時間365日の監視体制を構築するには、人件費、教育費、ツール導入費、運用管理費などが継続的に発生する。一方、クラウド型サービスを活用すれば、必要な機能を月額料金で利用でき、初期投資を抑えながらセキュリティ体制を強化できる。

3)高度な対応力

セキュサポは、インシデント発生後の対応だけでなく、予防段階からのリスク低減も支援する。アタックサーフェス調査や脆弱性診断により、攻撃者に狙われやすいポイントを事前に把握し、対策につなげることができる。また、インシデント発生時には端末隔離や証拠保全を実施し、被害拡大を防ぎながら迅速に原因を特定する。証拠保全は、後続の原因分析や再発防止策の策定にも不可欠だ。

外部サービスを活用したCSIRT運用が現実的なアプローチ

企業のIT環境が複雑化する中、基礎的なセキュリティ対策を継続的に運用し続けるのは容易ではない。サイバー攻撃の高度化・巧妙化を背景に、企業には「侵入を前提に被害を最小化する」体制の整備が求められている。

CSIRTはインシデント対応の中核を担う存在であり、初動対応、関係部門との連携、原因調査、再発防止までを一貫して担うことで、被害拡大を防ぎ、事業継続を支える。しかし、リソースの制約から、すべての企業が社内に専任CSIRTを構築できるわけではない。限られた体制で十分な対策を講じるには、自社だけで抱え込まず、外部の専門サービスを活用することが現実的な選択肢となる。

「セキュサポ」のようなクラウド型CSIRTサービスは、中堅・中小企業においても、予防・検知・対応までを包括的にカバーする体制を迅速かつ低コストで整備しやすい点に強みがある。専任CSIRTを自社で抱えるのと同等の運用を現実的なコストと運用負荷で実現できるため、費用対効果の面でも有力な選択肢と言える。

まずは、自社のセキュリティ体制を見直し、パッチ適用、バックアップ、アカウント管理、ログ監視、インシデント対応フローなどに抜け漏れがないかを確認することが重要だ。その上で、自社だけでは対応が難しい領域については、外部サービスの活用も含めて、現実的なインシデント対応体制の構築を検討してほしい。

この記事をシェア

セキュリティ対策に

サイバーセキュリティ
情報局の最新情報を
チェック!