もしセキュリティの世界にオリンピックのような競技があったとしたら、それはどういうものだろうか。数々の不正な攻撃に対して私たちを守り抜いているものが金メダルにふさわしいと言えないだろうか。そこで、競技種目と金メダリストを以下で想像してみよう。
この記事は、ESETが運営するマルウェアやセキュリティに関する情報サイト「Welivesecurity」の記事を翻訳したものである。
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夏季オリンピックは、唯一無二の祭典だ。しばしば世界最大のスポーツイベントの1つと言われるが、この歴史的なスポーツの祭典は、壮大な開会式やアスリートたちが成し遂げる素晴らしい競技の数々という点で、確かに目をくぎ付けにする。
以下では、2016年夏にリオデジャネイロで開かれたオリンピックの精神にのっとり、オリンピックになぞらえた情報セキュリティの耳寄りな情報をお届けしよう。
興味を引くのは、以下のような競技である。
1.砲丸投げ 金メダル――筋骨隆々なデータバックアップ
近年におけるランサムウェアの急増は、サイバー犯罪の「アスレチックの歴史」にその名を刻もうという野望を反映している。そのためランサムウェアは攻撃力の高さでこのカテゴリーの有望株となった。しかし、データのバックアップが極めて強力かつ効果的であったので、ランサムウェアが1位の表彰台に上るチャンスは、実際にはなかった
2.走り幅跳び 金メダル――複雑なパスフレーズ
この権威あるメダルは、長く複雑で、しかも覚えやすいパスフレーズが守った。それは「セキュリティ走り幅跳び」に、この先何年も破られることの難しい新たな標準記録を残した。安易なパスワードが返り咲いてこのレベルで競技することなど、もはや考えられない。もう誰もがここで勝負するしかないのである。
3.走り高跳び 金メダル――強固な暗号化
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暗号化がこの種目で長い間トップを競ってきたことに、驚きはない。暗号化の才能に疑問を呈する者もいたが、その潜在能力を正しく見抜いた者もいた。暗号化はこの競技で、今までよりもずっと高く跳び、新記録を打ち立てた。今後このセキュリティ・アスリートが、走り高跳びの世界を制するに違いない。
4.100mハードル 金メダル――プロアクティブなソーシャルメディア
ソーシャルメディアがこの競技を始めたときは、簡単に金メダルが取れたものである。当時サイバー犯罪は大した選手ではなかったし、この種目に挑戦する者がそれほど多くはなかったので、勝つのはたやすかった。しかしサイバー犯罪は、より速く走れるよう、たゆみなく練習に励んだ結果、今では深刻な脅威となった。それでもソーシャルメディアは、進路に立ちはだかる幾つもの「サイバーハードル」をクリアし、何度か1位の座をものにした。
5.100m走 金メダル――NATOの応戦
サイバー攻撃は「デジタルジム」で訓練を重ね、そのおかげでより速く、より強くなり、より洗練されてきた。幸いNATOがこれを憂慮し、サイバー応戦力の整備を急いだ(*)。そのかいあってNATOは「100mサイバーディフェンス走」で金メダルを獲得し、その輝かしい未来が約束された。
* 編集部注 NATOは2016年にサイバー空間を陸海空と並ぶ作戦領域と定義し、防衛力の強化を目指した。
……こんなふうに、思い出に残る競技がある。良い時があれば悪い時もあり、思いも寄らない急展開やどんでん返しがあり、われわれをトラックにくぎ付けにした多くの瞬間があった。次回、2020年に開催される東京オリンピックでも、情報セキュリティが再び成績表を金メダルで飾り、サイバー脅威を最下位に蹴落とすことを、大いに期待したい。