2018年3月 マルウェアレポート

この記事をシェア

ショートレポート「2018年3月マルウェア検出状況」

トピック

  1. 3月の概況について
  2. バンキングマルウェア「Ursnif」感染を狙った添付メール攻撃
  3. 偽のシステム警告を表示する詐欺サイト

1. 3月の概況について

2018年3月1日から3月31日までの間、ESET製品が国内で検出したマルウェアの種類別の割合は、以下のとおりです。

国内マルウェア検出数の種類別割合(2018年3月)

国内マルウェア検出数の種類別割合(2018年3月)

国内マルウェア検出数上位(2018年3月)

順位 マルウェア名 比率 種別
1 VBA/TrojanDownloader.Agent 22.5% ダウンローダー
2 JS/TrojanDownloader.Agent 12.8% ダウンローダー
3 HTML/FakeAlert 5.1% 偽の警告文を表示するスクリプト
4 JS/CoinMiner 4.4% マイニングスクリプト
5 Win32/RealNetworks 4.2% PUA(※)
6 Suspicious 3.7% 未知の不審ファイル呼称
7 JS/Redirector 3.3% リダイレクター
8 JS/Adware.Agent 2.1% アドウェア
9 HTML/IFrame 1.5% 別のページに遷移させるスクリプト
10 Win32/Toolbar.MyWebSearch 1.5% PUA(※)

(※)Potentially Unwanted Application(望ましくない可能性のあるアプリケーション):コンピューターの動作に悪影響を及ぼすことや、ユーザーが意図しない振る舞いなどをする可能性があるアプリケーション。

3月に最も多く検出されたマルウェアはVBA(Visual Basic for Applications)機能を悪用したダウンローダー「VBA/TrojanDownloader.Agent」でした。次いで、JavaScript形式のダウンローダー「JS/TrojanDownloader.Agent」が多く検出されています。いずれのダウンローダーも、1月や2月と比較して非常に多く検出されています。

2種類のダウンローダーの国内検出数推移(2018年1月-3月)

2種類のダウンローダーの国内検出数推移(2018年1月-3月)

一方、1月と2月に猛威を奮ったJavaScript形式のマイニングスクリプト「JS/CoinMiner」の検出数は減少傾向にあります。暗号通貨(仮想通貨)の価格下落や、ウイルス対策製品のマイニングスクリプト対策が進んだことにより、攻撃者の利益が減少したことがその背景として考えられます。

「JS/CoinMiner」の国内検出数推移(2018年1月-3月)

「JS/CoinMiner」の国内検出数推移(2018年1月-3月)

2. バンキングマルウェア「Ursnif」感染を狙った添付メール攻撃

3月に最も多く検出されたマルウェア「VBA/TrojanDownloader.Agent」は、Microsoft OfficeのVBA(Visual Basic for Applications)機能を悪用したダウンローダー型のマルウェアで、ファイル形式はMicrosoft Word文書やMicrosoft Excel文書です。

2018年1月以降では、「VBA/TrojanDownloader.Agent」の検出日のピークは3月15日、次いで3月6日でした。

VBA/TrojanDownloader.Agentの国内検出数推移(2018年1月-3月)

VBA/TrojanDownloader.Agentの国内検出数推移(2018年1月-3月)

「VBA/TrojanDownloader.Agent」の多くは請求書などを装ったメールに直接添付されています。メール本文と添付ファイルの中身がともに日本語で書かれているものを数多く確認しています。

メールに添付された悪性のMicrosoft Excelファイル(「VBA/TrojanDownloader.Agent」)

メールに添付された悪性のMicrosoft Excelファイル(「VBA/TrojanDownloader.Agent」)

悪性のMicrosoft Excelファイルに埋め込まれたVBAのコード

悪性のMicrosoft Excelファイルに埋め込まれたVBAのコード

悪性のMicrosoft Excelファイルを開きマクロを有効化すると、ファイルに埋め込まれたVBAのコードが別のマルウェアをダウンロード・実行します。そして最終的に、バンキングマルウェア「Win32/Spy.Ursnif」に感染します。

「Win32/Spy.Ursnif」は以下のような様々な情報を窃取することを確認しています。

  • キーボードの入力内容
  • スクリーンショット
  • Webカメラの動画や音声
  • インターネットバンキングサイトやクレジットカードの会員サイト、ECサイト、仮想通貨取引サイトの認証情報(ID、パスワードなど)

Microsoft Officeの標準設定では、VBAコンテンツの実行前に警告が表示されます。もし警告を非表示に設定されている場合は、セキュリティの観点からMicrosoft Officeのマクロは無効、もしくは警告を表示するよう設定しておくことをおすすめします。

また、「Win32/Spy.Ursnif」の感染を狙ったメール攻撃には、本文中に「Ursnif」のダウンローダーのURLを記載しているパターンもあります。併せて注意が必要です。

3. 偽のシステム警告を表示する詐欺サイト

警告文を表示する詐欺サイト(ESET検出名:HTML/FakeAlert)が多数検出されています。以下に紹介する事例では、「Windowsセキュリティシステムが破損しています」と偽の警告メッセージを表示し、PC修復ツールと称したソフトウェアをユーザーに購入させようとします。

偽のシステム警告画面

偽のシステム警告画面

偽のシステム警告画面を表示する攻撃では、悪質な広告からのリダイレクトやタイポスクワッティング(※)により、ユーザーをこのWebページへ誘導します。Webページは閉じることができないよう細工されており、ユーザーの不安を煽ります。警告画面の指示通りに[更新]をクリックするとソフトウェアのダウンロードページに遷移してしまいますので、このようなWebページに遭遇した場合は、タスクマネージャーからウィンドウを閉じてください。

(※) 著名なドメインに似たドメインを取得し、URLをタイプミスしたユーザーを偽サイトに呼び込む攻撃手法のこと。
【例】example.com(正規のサイト) に対して example.cm(偽サイト)

PC修復ツールと称したソフトウェアのダウンロードページ

PC修復ツールと称したソフトウェアのダウンロードページ

偽のシステム警告画面で[更新]をクリックした際に表示される、PC修復ツールと称したソフトウェアのダウンロードページです。
[今すぐダウンロード]ボタンをクリックすると、ソフトウェアのインストーラーがダウンロードされます。インストーラーを実行し画面の指示に従いインストールを進めると、システムに問題が見つかったことを伝えるメッセージが表示されます。

PC修復ツールと称したソフトウェアの画面

PC修復ツールと称したソフトウェアの画面

更に画面の指示に従うと、Webブラウザーでソフトウェアの購入ページが開かれます。購入ページでは、クレジットカードなどの支払い情報の入力を要求されます。

PC修復ツールと称したソフトウェアの購入ページ

PC修復ツールと称したソフトウェアの購入ページ

個人情報の入力をする場合は、そのサイトが信頼できるサイトかどうかを慎重に確認してください。

ESET製品は、ダウンロード時にこのソフトウェアを「MSIL/GT32SupportGeeks 望ましくない可能性があるアプリケーション」として検出します。

ESET Endpoint Security V6.5における検出画面

ESET Endpoint Security V6.5における検出画面

ご紹介したように、3月はバンキングマルウェア「Ursnif」の感染を狙ったメールや、偽の警告メッセージを表示する詐欺サイトが確認されました。常に最新の脅威情報をキャッチアップすることが重要です。


■ 常日頃からリスク軽減するための対策について

各記事でご案内しているようなリスク軽減の対策をご案内いたします。
下記の対策を実施してください。

1. ESET製品プログラムのウイルス定義データベースを最新にアップデートする

ESET製品では、次々と発生する新たなマルウェアなどに対して逐次対応しております。
最新の脅威に対応できるよう、ウイルス定義データベースを最新にアップデートしてください。

2. OSのアップデートを行い、セキュリティパッチを適用する

ウイルスの多くは、OSに含まれる「脆弱性」を利用してコンピューターに感染します。
「Windows Update」などのOSのアップデートを行い、脆弱性を解消してください。

3. ソフトウェアのアップデートを行い、セキュリティパッチを適用する

ウイルスの多くが狙う「脆弱性」は、Java、Adobe Flash Player、Adobe Readerなどのアプリケーションにも含まれています。
各種アプリのアップデートを行い、脆弱性を解消してください。

4. データのバックアップを行っておく

万が一ウイルスに感染した場合、コンピューターの初期化(リカバリー)などが必要になることがあります。
念のため、データのバックアップを行っておいてください。

5. 脅威が存在することを知る

「知らない人」よりも「知っている人」の方がウイルスに感染するリスクは低いと考えられます。ウイルスという脅威に触れてしまう前に「疑う」ことができるからです。
弊社を始め、各企業・団体からセキュリティに関する情報が発信されています。このような情報に目を向け、「あらかじめ脅威を知っておく」ことも重要です。
この記事をシェア

業務PCのセキュリティ対策に

引用・出典元

サイバーセキュリティ
情報局の最新情報を
チェック!