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Jailbreak(脱獄)
読み方: ジェイルブレイク

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スマートフォンのプログラムを改変して完全な管理者権限を取得することで、機能制限を解除するための行為


主に、スマートフォン(以下、スマホ)などの機器について、ベンダーによる機能的な制約を取り除き、通常使用不可能な機能を使用できるようにすること。時にベンダーが課す制約は「監獄」と例えられ、そういった厳しい制約から逃れることとして、「Jailbreak」との俗称が流布されるようになった。一般的には、スマホの完全な管理者権限を取得することにより、課された制約を解除するための行為が脱獄に該当する。

一般的に、スマホは販売時にユーザー権限を限定して提供されている。アプリストアからダウンロードしたアプリケーションも、その権限の範囲で動作することを前提に作られている。一方で、ベンダー自身やOSベンダーが作成したソフトウェアには、特別な権限をもって実行できる操作がある。

ユーザーがスマホの完全な管理者権限を取得するJailbreak状態では、どのような操作も実行可能となる。例えば、フォントなどのシステムファイルの書き換えやCPUのクロック速度の制御といった、細部の制御も該当する。

Jailbreak(脱獄)によるメリットとデメリット

以前よりさまざまな機器・機種でのJailbreakが行われているが、最も有名なのはiPhoneのOSであるiOSを改変するJailbreakだろう。iPhoneのJailbreak用ツールとしては、一世を風靡したCydiaが広く知られている。iPhoneは発売された当時、コピー&ペーストすらできず、そうした状況に風穴を開けたのがCydiaであった。

Jailbreakのメリットは、正規のAppStoreでは配布されない、アップル社非公認のソフトウェアやLinux由来のソフトウェアを利用できる点が挙げられる。例えば、Sileoと呼ばれるパッケージマネージャーを利用することで、テーマ・フォント・サウンド・アイコンなどを入れ替える、あるいは、カメラのシャッター音が消せるといったような設定の変更が可能であった。

デメリットの1つとして知られるのは、アップル社のサポート外となることだ。 Jailbreakを行った形跡のあるiPhoneはアップル社だけでなく、携帯回線事業者の保証対象外ともなる。つまり、故障した場合に修理・交換などのサポートを受けることができなくなるのだ。また、JailbreakはOSやソフトウェアの脆弱性を利用することからセキュリティリスクも非常に高くなる。このように、現状では得られるメリットよりもデメリットのほうが大きいと言える。

Jailbreak(脱獄)によるセキュリティ上のリスク

Jailbreakという行為は、2010年代前半から中盤にかけて一部のiPhoneユーザーで行われたことで、その名が広まることとなった。当時のiOSでは、ホーム画面および通知センター、コントロールセンター、Spotlight検索などのカスタマイズがほとんどできず、壁紙の変更や言語の変更程度となっていた。

Jailbreakによって「アイコンなどデザインのカスタマイズ」、「フォルダ機能の拡張」、「ホーム画面が快適に動作する」、「マルチタスク」、「ロックスクリーンにカレンダーを表示」、「テザリングが制限されているキャリアであってもWi-Fiテザリングが可能」、「SIMロックの解除」といった行為が可能となることから、サポート対象外となるという大きなデメリットを甘受してでもJailbreakという選択をするユーザーもいたのだ。

しかし、メジャーアップデートごとに、iOS自体の機能が充実していき、Jailbreakによるメリットも限定されるようになった。また、Jailbreak用アプリの動作などは多くの場合、OSやソフトウェアの脆弱性を利用していることもあり、危険な状態である。同じ脆弱性を悪用したマルウェアの感染というリスクを抱えた状態であるためだ。

Jailbreak状態にあるiPhoneでは、セキュリティの堅牢性も担保されない。先述のように、Jailbreak状況が実現できている時点で脆弱性を抱えていることと同義であるため、その状況を狙うマルウェアの餌食となり得るのだ。

また、Jailbreakという行為には失敗時のリスクも伴う。本体のハードウエアやOS、ソフトウェアのバージョンに依存する部分が大きいため、少しでも環境が異なると、脱獄が失敗してiPhoneが壊れてしまう可能性もあるのだ。

iPhone以外の端末でのJailbreak(脱獄)

iPhoneだけでなく、AndroidスマホにもやはりJailbreakの概念があり、実行に移すユーザーも存在する。AndroidスマホにおけるJailbreak状態とは、完全たる管理者権限を取得するroot化である。Androidスマホでは、当初から公式ストア以外で配布されるアプリも利用できるため、iPhoneのJailbreakで得られるメリットとは少し異なるだろう。

一方で、企業内に限定して利用される特殊なアプリなどでは、Jailbreak状態で利用せざるを得ないものもある。この場合、システム管理者が端末を管理下に置いて厳重に行われることになる。プライベートでJailbreakを行うメリットはほとんどないような状況となっている昨今、よほどの必要性がない限り、Jailbreakの利用は推奨できない。

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