コンピューターウイルスは、パソコンなどデバイスの種類を問わず、感染のリスクがある。ウイルスの有無をチェックする無料ツールも提供されており、簡易的にセキュリティを高めることも可能になった。この記事では、ウイルス感染時の挙動や無料チェックツールの利用について解説し、ウイルス感染を防ぐ方法を紹介する。
コンピューターウイルス感染時の症状は?
コンピューターウイルス(以下、ウイルス)とは、悪意を持って他者のデバイスに何かしらの被害を及ぼすように作られたプログラムだ。自己増殖によって、ほかのデバイスへと感染が拡大する様子から、生物学上のウイルスにちなんで名づけられた経緯がある。一方、悪意のあるプログラムのうち、感染後に自己増殖しないものはワームと呼ばれる。こうした悪意のあるプログラムを総称したのがマルウェアだ。
ただし、一般的には明確に分類されず、ウイルスとマルウェアは同義とみなされるケースもある。この記事でも、悪意のあるプログラム全般をウイルスとして説明していく。
ウイルス感染の手口は時代を追って巧妙化する一方だ。近年は、パソコンやスマートフォン(以下、スマホ)といったデバイスの種類を選ばず、被害をもたらしている。
かつては、突如画面上に見慣れないメッセージや画像が表示され、ウイルスの感染に気づくこともできた。しかし、最近のウイルスは、ユーザーにその挙動が気づかれないよう巧妙に隠ぺいされているのが特徴だ。例外として、データを暗号化するなどして身代金を要求するランサムウェアもあるが、それを除けばユーザーがウイルスの挙動に気づくのは難しい。
ただし、最近のウイルスであっても、以下のように、ユーザーが認識できる挙動がデバイスに現れるケースもある。必ずしもウイルス感染を示唆するわけではないが、その兆候として把握しておきたい。
1)デバイスの不良な動作
意図せずデバイスが再起動する、急に動作が重くなる、ソフトウェアやアプリが頻繁に固まる、あるいは停止するといった現象が見られる場合がある。
こうした現象が確認されるケースは、ウイルスがユーザーに気づかれないよう、バックグラウンドで別のプログラムをダウンロードするなどして、デバイスに負荷がかかっている可能性が考えられる。加えて、通信量の急激な増加といった兆候が見られるケースもある。
2)Webブラウザーの不可解な挙動
Webブラウザーで頻繁にポップアップ画面が表示される、設定が変更されて異なるページが表示される、あるいは、ツールバーに見覚えのないアイコンが登録されている、といった症状が挙げられる。また、過去にはWebカメラが勝手に起動するといった被害も確認された。ほかにも、ユーザーが気づかないうちにフィッシングサイトへ誘導されてしまうといった手口も報告されている。
ウイルスの無料チェックにおけるメリットとデメリット
ユーザーにとって感染に気づくのが難しいウイルスから身を守るため、その検出と駆除を行うソフトウェアが必要となる。企業や組織で利用している業務用デバイスの場合、あらかじめセキュリティソフトがインストールされていることも多いはずだ。
個人用のデバイスであっても、WindowsやMacのパソコンには初期設定でウイルス対策機能が搭載されている。しかし、スマホの中でもAndroid搭載のものではウイルス対策機能が十分ではない場合もある。
業務利用でなければ、セキュリティに対する出費はできる限り抑えたいと考える人も少なくないだろう。そうしたニーズに応えるべく、オンラインで利用できるスキャンツールや、無償のウイルス対策ソフトが存在する。以下に、それぞれの特徴を解説する。
1)オンラインスキャンツール
ウイルスを検出するためのWebサービスとして、多くのサービスが提供されるようになった。ベンダーが提供するアプリをダウンロードして実行すれば、簡単な操作で利用できるものが多い。しかし、Webサイトへアクセスして利用できるものもある。その場合、不審なサイトと思われるURLを入力して、そのサイトにウイルスが存在するかどうかを判別する。あるいは、ファイルを個別にアップロードしてウイルスが含まれているかどうかを判別する仕組みだ。
オンラインスキャンツールのメリットは、無料かつ容易に利用できる点だ。一方、デバイスに常駐するわけではないため、手動で疑わしいファイルを特定しなければならないのがデメリットと言える。そして、駆除する機能は実装されず、別途、ウイルス駆除用のソフトウェアが必要となったり、ユーザーに対するサポートも原則提供されなかったり、というものが少なくない。
さらに、誤って機密情報や個人情報をアップロードしてしまった場合、本来開示するべきではないユーザーへそれらの情報を開示したことになり、情報漏えい事件に発展する恐れがあるため注意が必要だ。
2)無償のウイルス対策ソフト
ウイルス対策ソフトを無償で提供しているベンダーも存在する。それらのソフトウェアの中には、検出力が高く、駆除機能を搭載しているものもある。無償であるため、個人所有のデバイスでも導入に要する金銭的負担が生じず、セキュリティを向上できるのがメリットだ。例えば、WindowsのDefenderやMacのXProtectは標準搭載されるウイルス対策ソフトの代表だろう。ダウンロードして実行することでパソコン全体をスキャンし、マルウェアの駆除まで行うMicrosoft セキュリティ スキャナーなども知られている。また、学術、研究目的でウイルス対策の機能を提供している場合もある。
ただし、こうした提供形態の場合、高度なサイバー攻撃への対応が十分ではなかったり、サポートが充実していなかったり、といったケースもある。無償でウイルス対策ソフトを利用する場合、これらのデメリットを認識しておくようにしたい。
またESET社でも、無料マルウェア駆除ツール「ESET Online Scanner」を提供している。実行ファイルをダウンロードすれば、PCからマルウェアを包括的に検出や駆除するツールだ。
ウイルス感染を防ぐための対策
ウイルスに感染してしまうと緊急な対応を迫られるため、ユーザーが心理的に動揺するのは避けられない。こうしたユーザーの不安な心理状態を狙うべく、ウイルス感染を偽った警告画面を表示するフェイクアラートの被害が増えている。
こうした手口は一般的にサポート詐欺とも呼ばれる。ウイルスを駆除するため、案内されたセキュリティセンターへ連絡すると、個人情報を詐取されたり、金銭を要求されたりすることになる。
情報処理推進機構(IPA)によると、2023年5月にサポート詐欺の手口に関する月間相談件数が、過去最高の446件を記録したとして注意喚起を行っている。
この手の詐欺の被害を避けるには、ESET製品のような総合的なセキュリティソフトの導入が有効だ。巧妙化するサイバー攻撃に対し、信頼できるベンダーが提供する有償のセキュリティソフトは最新の防御手段を提供する。既知のウイルスだけでなく、未知のウイルスに対する検出技術も進化しており、高度な防御策を講じることが可能となる。
また、スパムメール、フィッシング詐欺、オンラインバンキング保護、ホームネットワーク保護、パスワードマネージャーといった広範囲のセキュリティ対策が含まれるため、総合的に安全性を高められるのがメリットだ。
近年、高度化・多様化してきているウイルスの状況を踏まえると、単一的な対策での安全確保は難しくなっている。複数の機能を組み合わせて多層的な防御を施すことが求められており、総合的な対策が可能なセキュリティソフトの導入が望ましいだろう。