ネットリテラシーとは?ネット犯罪増加の時代に求められる知識とスキル

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かつて、一部の学術者・研究者のための通信手段であったインターネットが一般に開放されて30年以上が経過し、日常生活に欠かせないものとなっている。しかし、そうした状況を悪用しようとする攻撃者も少なくない。この記事では、適切に情報を発信するための能力「ネットリテラシー」について解説する。

ネットリテラシーとは?ネット犯罪増加の時代に求められる知識とスキル

ネットリテラシーとは

デジタル技術の進歩と同時に、インターネットの利用も日常生活に欠かせないものになってきている。そのように状況が変化する中で、インターネット上には日々加速度的にさまざまな情報が蓄積・拡散され続けている。しかし、そうした情報すべてが正しいものとは限らず、中には真偽が不明な情報も多くなっているのが実情だ。

そうした状況を踏まえて、インターネットを利用するユーザーには、情報を多角的に受け取り、冷静に判断して真偽を見極めるスキルが問われている。インターネット上における「リテラシー」、すなわち適切に読解する能力は「ネットリテラシー」と呼ばれている。ネットリテラシーの個々の能力として、以下のようなものが挙げられる。

インターネット上の情報の真偽・正確性を判断して、取捨選択、適切に反応できること

インターネット上に氾濫する情報の真偽を判断し、時にはさまざまな情報源をチェックした上で、その情報の正確性、公平性を検証することが求められる。信頼できるメディア以外の情報の場合、情報の発信者はどういった意図をもってそうした情報を発信しているのかも確認することが望ましい。

適切にプライバシー保護やセキュリティ対策が行えること

SNSに投稿された情報などをくまなく調査し、そうした情報を悪用して犯行に及ぶことをソーシャル・エンジニアリングと呼ぶ。自身が投稿した情報を元に犯罪に巻き込まれてしまえば、元も子もない。加えて、自らの投稿が他者、あるいは所属先の企業に悪影響を及ぼすこともある。投稿する際は、一度冷静にそうした影響の範囲を考慮してから行うようにしたい。

現実世界では行わないような過激で、人を傷つけるような発言をしないこと

差別的な発言や、中傷、恫喝などを日常的に現実世界で発する人は少数派だろう。しかし、インターネットの匿名性という性質を隠れ蓑に、悪質な発言がインターネット上には溢れかえっている。当然ながら、インターネットも現実世界の一部だという認識が求められる。

電子商取引、すなわちEコマースでの適切な対処

代表的なフィッシング詐欺をはじめ、インターネット上には詐欺的な手法が溢れかえっている。そして、その手法は日々悪質化の一途を辿っている。大手通販サイトなどを騙ったフィッシング詐欺だけでなく、最近では購買心理を巧みに突いて詐欺を行う攻撃も増えている。例えば、安売りされている場合、なぜ安売りされているのかを考えること。そして、その販売元の信頼性を確認することが求められる。ただし、攻撃者の手口も巧妙になっており、詐欺に遭遇しないためには、公式のECサイトを利用するのが無難だろう。

インターネットの利用時間への配慮

近年、「中毒的」、「依存症的」に長時間インターネットを利用するユーザーが増加傾向にあるとも言われている。利便性が高く、コンテンツも充実しているため、長時間利用しがちだが、現実の生活に支障が出ない範囲内での利用にとどめることを心がけたい。

ネットリテラシーが乏しいことによるリスク

先述した能力などを身につける、理解することが「インターネットリテラシーを身につける」ことであり、インターネット上での行動によって生じるリスクは低減する。しかし、裏返すと、こうした能力を身につけなければ、トラブルに巻き込まれる、あるいは意図せず関与してしまうリスクが生じ得ることにもなりかねない。インターネットリテラシーを身につけないことで、想定されるリスクは以下のようなものが挙げられる。

インターネット上のさまざまな詐欺行為による被害

先述のフィッシング詐欺などをはじめ、激安品のセールなどと称して「模造品」を売るような詐欺サイトなども増えている。あるいは、セキュリティサイトを騙ってマルウェアが潜伏するソフトウェアをインストールさせるといった手口も考えられる。

不適切なプライバシーの公開、個人情報の流出

自宅の住所が特定される、趣味・嗜好・家族構成などを特定されてしまうといったリスクが生じ得る。こうした情報が漏えい・公表されてしまうことで、さまざまな被害に遭遇する危険性がある。

個人、法人を問わず名誉毀損、信頼失墜

極めてプライバシー性が高い情報をインターネット上に拡散されてしまう恐れがある。また、誤解を与えるようなメッセージや写真を自らが投稿することで、名誉毀損として訴えられるような可能性も考えられる。

著作権や肖像権の侵害

ポスター・絵画などを撮影し、作者・所有者の了承をとらずにSNSに投稿することで、著作権や肖像権の侵害に該当するケースがある。ただし、作者が投稿を許容、むしろ積極的な発信を期待しているケースもある。事前に作者に確認することでトラブルは回避できるだろう。

マルウェア感染による迷惑メールの送付行為

マルウェアに感染することで自らに被害が生じるだけでなく、他者を巻き込む可能性がある。企業・組織の場合、ネットワーク経由で感染が広がる恐れもある。また、マルウェアによってはメールソフトを乗っ取り、迷惑メールをばら撒くといったことも想定される。

情報を発信する際の注意点

位置情報の共有も可能なSNSの場合、投稿を重ねることで居住地が特定されることは代表的なリスクだろう。このように、デジタル機器の機能を利用する場合においても、メリットとデメリットをよく考え、冷静に判断してから行動に移すことがリスク低減につながる。

また、SNSや掲示板などにて、自身の感情に任せて他人の誹謗中傷を含む投稿をしているようなケースも見かける。この場合、匿名での投稿であっても、のちのち相手に訴えられるリスクもあり、実際に過去に訴訟も起こっている。

現代はインターネットの発展により、誰しもが情報発信者になることができる時代だ。国内はおろか、世界に向けて情報を発信し、大きな影響力を与えることも可能となった。その一方で、「仲間内だけの話」が「世界中への発信」と相違ない状態に変わったという側面もある。インターネットでの情報発信という行為が、以下の特性を持つことを頭に入れておきたい。

無制限な情報の拡散範囲

正確な情報、悪質な情報、そしてどうでもよいような情報ですらも、世界中に広がる可能性があるということだ。文字、絵、動画なども、ひとたびデジタル情報に変換されれば手軽にコピーができてしまう。インターネット上にアップした情報は自らの想定もしない範囲に広がってしまう可能性を認識しておく必要がある。

情報の永続性

一時期メディアでも騒がれていた「デジタルタトゥー」が象徴的だが、一度、インターネット上にアップされた情報の完全な削除は難しい。先述のとおり、元のデータを削除したとしても、削除時点ですでに複製されている可能性があるためだ。そのため、一度投稿した情報は削除できない可能性も踏まえて、慎重に投稿内容を判断するようにしたい。

担保されない匿名性

国内で一世を風靡したネット上の巨大掲示板などを筆頭に、誹謗中傷が相次いだ。そういった被害からユーザーを保護するために、サービス事業者もさまざまな対処を進めている。また、法改正により、通信事業者への情報開示も可能となり、近年は完全な匿名性を確保することは難しくなっていると言ってよいだろう。

情報を入手する際の注意点

先述のように、ホームページ開設、ブログ、そしてSNSといった情報の発信手段が増え、そのハードルが下がったことで、現在のインターネット空間にはおびただしい量の情報が氾濫している。そして、そうした情報の中には真実ではないものも数多く存在している。ユーザーとしては、偽りも真実も入り混じっている情報の中から、正しい情報を見極めることが求められている。そのためにも、以下のような観点を持つようにしたい。

情報の真偽の確認

先述のとおり、インターネット上に氾濫する情報には真偽が不確かなものが少なくない。特に、災害や大きな事件などが絡んだ場合、SNS経由で偽りの情報が拡散するケースは少なくない。このような時を狙って、危険性や不安を煽る偽りの情報を信じ込ませようとする愉快犯的な人間も存在する。衝撃的な事件、情報であるほど、ユーザーの関心は強くなり、広まりやすいためだ。

また、特定の思想や信条への共感を狙ったフェイクニュースなども増えている。こういった類の情報に接触した場合は、複数かつ信頼できる発信元の情報を取得してから真偽を判断するのが望ましい。

お得感を煽る、即行動を促す情報への注意

インターネット上には金銭を詐取しようとする情報で溢れかえっている。「手軽に副収入が!」などと副業や手軽なビジネスを騙り、詐欺行為を働こうとするものも見かけられる。こうした詐欺行為は「あなただけ」や、「今すぐに」として行動を促す。そして、冷静になる時間を与えないことで詐欺の成功確率を高めようとするのだ。

自分だけにお得な情報が提示されることには、必ず何かしらの理由があると考えるべきだろう。冷静に立ち止まって判断するよう心掛けることで、詐欺行為のリスクは低減するはずだ。

情報発信者の狙いを見極める

容易に情報を発信しやすくなった時代ではあるものの、発信するには手間やコストが少なからず生じる。すなわち、その情報の発信者は生じるコストや手間に何かしらの見返りがあるから発信するのだ。その見返りは金銭の詐取といった実益に直結するもの以外にも、承認欲求やSNSのフォロワー獲得といった場合もある。また、発信者当人の正義心によるものもある。発信者の裏にある狙いを見極めるようにしたい。

子供を取り巻く「シェアレンティング」というリスク

近年、「シェアレンティング」という言葉が巷でも聞かれるようになった。「シェア(share)」と「育児」を意味する「ペアレンティング(parenting)」を組み合わせた造語だ。子育て中の親が自分の子どもの写真や情報をSNSに投稿し、周囲の親たちと共有する行為を指す。

例えば、自分の子どもたちが楽しんでいる様子の動画や画像をSNSに投稿し、互いに「いいね!」をもらい合う。育児という活動で生じる苦労、喜びなどを共有し合うことで、親同士が連帯感を高めることができる。しかし、長い目で見ると子どもたちにはデメリットも生じ得る。クローズドなSNSであればまだしも、オープンな場への投稿の場合、以下のようなリスクが想定される。

子どもの特徴、嗜好などが世間一般に公開されることに

幼い子どもたちの場合、親たちが写真、動画を撮って公開することについて気をとめることは少ないかもしれない。しかし、動画の内容によっては子どもたちの好きなもの、行動のクセなどが表出してしまう恐れがある。こうした情報は子どもたちを誘い出すことを企む者、場合によっては犯罪者にとって格好の情報となる可能性もある。

子どもが望まない写真、動画が公開されることに

幼いころの想い出はすべて良いものばかりとは限らない。また、親にとって良い思い出でも、子どももそうとは限らない。子どもの頃に撮影された自分の水着姿がインターネット上に掲載され続けたことを後に、成長した子どもが知った場合、どういった感情を抱くだろうか。投稿の際には、10年後に子どもが見ることまで想像を膨らませて行うようにしたい。

デメリットばかりをあげつらったものの、こうした投稿にもメリットは少なからずある。10年後、子どもが自らのルーツを振り返る際に参照することで、当時の親たちの思いや愛情に触れる機会ともなり得る。さらにその先、子どもたちが親の立場になった際には、自らの育児の参考になる情報にもなり得るだろう。デメリット、メリットをよく踏まえ、リスクが少ない方法をとるようにしたい。

インターネットも生活空間の一部であるという認識を

スマートフォンを筆頭に、インターネットに接続するデジタル機器が普及し、さまざまなサービスが享受できるようになるなど、インターネットは人々の生活の一部となりつつある。

インターネット空間でも現実空間と同様に、生きていくためには必要なリテラシーが求められる。しかし、そうしたリテラシーはすぐに身につくものではなく、時間をかけて培っていくものだ。例えば、漢字や掛け算は生来習得しているものではなく、小学校低学年に地道な学習で身につけていったはずだ。不安に思うのであれば、他者の投稿を参考にしながら、自らの投稿内容の判断に自信が持てるまで、閲覧するのみに徹するというのも一考に値する。

ただし、インターネットという空間は世界中と接続が可能という点が大きく異なる部分でもある。当然ながら、世界中と接続可能という状態を踏まえたリテラシーを身につけていく必要があるのだ。インターネット上も公共空間であるという前提に立ち、適切に行動するモラル、リテラシーが求められる。

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