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NFT
英語表記:Non-Fungible Token

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画像や音声などのデジタルデータに「唯一性」を付加する技術、およびその対象


NFTとは「Non-Fungible Token」の略で、直訳すれば「代替不可能な印(しるし)」となる。トークン(Token)という言葉はもともと、プログラミング用語として使われてきた経緯があり、そこではプログラムの文字列の最小単位として、何かしらの意味を持つ文字列の事を指す。そこから派生して、デジタル界隈ではさまざまな場面でこの言葉が利用されるようになっている。

よく知られるのは、「ハードウェアトークン」や「トークンアプリ」など、セキュリティの認証に関連する「セキュリティトークン」だろう。また、暗号資産(仮想通貨)でやり取りされるデジタルデータ、すなわちコインもトークンと呼ばれる。このトークンに関する技術のうち、ブロックチェーン技術によってデジタルデータに唯一性を付加する技術、およびその対象をNFTと呼ぶ。

NFTは、一般的なデジタルデータとは異なりコピーや改ざんができない(非代替性)ことが特長だ。ブロックチェーン技術を基盤としており、ブロックチェーン上で発行や取り引きを行うことで、非代替性を実現する。NFTを価値のあるデジタルデータと結びつけることで、そのデータが唯一無二の存在となるのだ。

NFTの歴史

NFTという概念が広がるきっかけとなったのは、2017年11月にブロックチェーン1つであるイーサリアム上で誕生した「CryptoKitties」というゲームだと言われている。CryptoKittiesでは、架空の猫のキャラクターをNFT化して、個性を与えた。その結果、ゲームのプレイヤーは珍しい猫のキャラクターを収集すべく、猫のNFTを売買するようになり、売買目的でゲームを始める人も登場した。

当時、世間一般に広く認知されるまでには至らなかったものの、時が流れデジタルアートとNFTが結び付くようになったことで、潮流は大きく変化した。特に、2021年3月に著名なデジタルアーティストによるNFT作品が、オークションにて約75億円で落札されたことを契機に、NFT関連のビジネス、中でもNFTアートへの新規参入が一気に加速した。

暗号資産とNFTの違い

ビットコインのような暗号資産とNFTはどちらもブロックチェーン技術をベースにしているが、トークンの代替可否という点に大きな違いがある。暗号資産は実際の通貨と同じように○○円分の価値があるデジタルデータとして取り扱い、ほかの暗号資産や金銭、物品との交換が可能だ。

一方で、NFTは紐付いているデータ(作品)を含めた資産価値として扱われ、ほかの作品とはそれ自体の価値は等しくないことを原則とする。作品自体が唯一の価値を持ち、その金銭的な価値は取り引きによって変動する。そのため、作品ごとに有している作品性を担保することになり、芸術作品の価値づけと親和性が高いのだ。また、暗号資産は分割して配布できるが、NFTでは分割できないという違いもある。

現在、NFTの取引は、その多くがイーサリアムというブロックチェーンのプラットフォーム上で行われている。イーサリアムではイーサ(Ether)と呼ばれる通貨が暗号資産として用いられる。そのため、NFTの価値もイーサで示されることが多い。

NFTの3つの特徴

NFTの主な特徴は、次の3つだ。

さまざまな機能を付加することが可能

イーサリアムをはじめとするブロックチェーンのプラットフォームでは、売買時に契約を自動実行する「スマートコントラクト」が採用されているため、NFTの所有者はNFTを取り引きする際、さまざまな機能を付加できる。この特徴を利用して、後々の再販売、転売時においても1次創作者へ継続的にマージンが入る仕組みが実装されている。

自由な取引の確立

NFTはパブリックブロックチェーン的な非中央集権的な仕組みに基づいていることから、所有者は自分が保有するNFTを自由に移転できる。こうした国や既存の枠組みにとらわれることなく、自由な取引が可能なことを取引可能性と呼ぶ。

相互運用性

従来のデジタルコンテンツは、購入元のプラットフォームに紐付くため、そのプラットフォームのサービス終了によって利用できないリスクが存在する。一方、NFTでは基本的な仕様が共通規格となっているため、規格に基づいて発行されたNFTであれば、どこでも取り扱うことができる。そのため、プラットフォームを跨いだコンテンツの利用が可能となる。

NFTで懸念すべきこととは

NFTは大きな可能性を秘めた技術であり、将来の期待も大きいが、いくつか懸念点もある。まず、NFTアートの価値が無価値化するリスクだ。NFTはコピーや改ざんが不可能といっても、それはブロックチェーン上のNFT自体の話であり、紐付けられたデジタルデータそのもののコピーを防ぐことは難しい。こうした状況をどう価値としてみなすのか。時代によって変遷する可能性も否定できない。

また、NFTの保有をもって、作品自体の所有権、著作権を有しているわけではないことにも注意が必要だ。加えて、デジタルデータが特定のプラットフォームに依存している場合、そのプラットフォームの運営が終了してしまうと、そのデータの価値も消失する懸念がある。

NFTは資金決済法上の暗号資産に該当しないため、金融規制の監督外となる。何らかのトラブルが発生した場合、現状では自己責任となるという点にも十分留意したい。

NFTの今後

NFTは誰でも気軽に購入できるだけでなく、自分が描いた絵などをデジタルデータ化することで、簡単にNFTアートとして販売することもできる。その登場以来、市場拡大が続いており、特にゲームやアートの領域で利用が進んでいる。デジタルアートやゲームアイテムなどのデジタルコンテンツの所有証明書として使われることが多いが、最近は絵画や彫刻など物理的な物品の所有証明書として使われるようにもなってきている。

今後はNFTを鍵やチケットの代わりとして、物のレンタルやイベントへの参加といった使い方や、SNSでの発言をNFTで唯一性を担保するなど、これまで価値があるとみなされなかった領域に価値を見出す使い方にも期待が高まっている。

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