チケットのオンライン購入で騙されないために

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人気のあるチケットが販売される際には、インターネット上で偽のチケットを販売する詐欺師も多く現れるものだ。この記事では、こうした詐欺の実状と詐欺に遭わないための注意点について解説する。

この記事は、ESET社が運営するマルウェアやセキュリティに関する情報サイト「Welivesecurity」の記事を翻訳したものである。

チケットのオンライン購入で騙されないために

2022年に入り、イベント業界が徐々にこれまでの勢いを取り戻すにつれ、ライブやフェスのチケットへの熱狂が帰ってきた。英国では、多くの音楽イベントのチケットが数時間のうちに売り切れてしまったことで、転売チケットを求めて二次流通市場やソーシャルネットワークに集まる人も少なくない。こうした状況は、残念ながら、詐欺の温床となっている。

人気のチケットを手に入れようとファンが必死になるがあまり、詐欺師がつけこむ隙が生まれている。夏のはじめに、2022年の主要なフェスのチケットをGoogleで検索してみると、極めて怪しげなリンクが多数、見つかった。入手困難なチケットが、あたかも入手できるように騙る広告は、詐欺の最初の一歩と考えることができる。広告を信じてクリックした人を、偽の売買サイトへ誘導するのだ。ただし、明らかに偽物に見えるか、高すぎる価格をつけているケースが多い。

ある調査では、チケット詐欺の件数は前年と比較して5倍以上に増えたと報じられた。その手法は洗練されてきており、十分に注意したユーザーであっても騙される可能性がある。英国のAction Fraud(不正報告センター)によると、毎年数千人がチケット詐欺の被害に遭っているとされ、2019年の被害総額は約160万ポンド(2億6,700万円相当)に上った。しかし、恥ずかしくて詐欺に遭ったことを認められない被害者の存在を考慮すると、チケット詐欺の規模は報告よりも大きいだろうと推測できる。

残念なことに、チケットが電子化される傾向は問題を悪化させている。犯罪者は同じ偽のチケットを、異なるプラットフォームで何度も、疑われることなく販売できてしまうようになった。そして、偽のアカウントを削除してしまえば、容易に検挙から逃れられる。

実際、第三者が電子チケットのバーコードをコピーし、紙に印刷したり、スマートフォンに画像で保存したりして、イベントへ参加できてしまう。被害者が騙されたことに気づくのは、イベント会場に到着し、当該チケットがすでに使用されており、自分のチケットが無効になっていたと知らされたときだ。

簡単に模造できてしまうチケット

チケットを売買するためのeBayやFacebookマーケットプレイスでチケットを検索すると、バーコードやバーコード番号が鮮明にわかるチケット商品が多数見つかる。券面に印刷されたQRコードやバーコードが、イベントの入場時に必要になるものであれば、決してチケットを撮影してオンラインに投稿してはならない。

チケットに記載されたQRコード・バーコードや番号へ落書きしたり、取り消し線を引いたりすれば、詐欺の被害を避けられると考える人も少なくない。しかし、まったくそのようなことはなく、表示されたチケットからコードや番号を再生成して、コピーを作るのは驚くほど簡単なのだ。バーコードから該当する番号に変換する、あるいは、その逆をするアプリやオンラインサービスも存在しているほどだ。

FacebookマーケットプレイスとeBayで見つかったもののうち、過去に行われたイベントのチケットを再生成した画像のサンプルを以下に紹介する。

再生成したイベントチケット画像のサンプル

再生成したイベントチケット画像のサンプル

こうしたチケット詐欺はオンラインを主戦場とする詐欺師にとって有効な手法であり、身元を隠すツールを使っていれば、その所在を突き止めることさえ困難となる。チケット詐欺は、売り手と買い手双方が理解を深めるべき問題であり、チケット市場の安全を維持するためにもさらなる対策が必要だ。

Webサイト側が、こうした画像のアップロードを禁止するのは難しいかもしれないが、簡単な方法として、購入証明としてチケットの画像をFacebookやeBayに投稿した際に、バーコードやQRコード、あるいは付随する番号を不鮮明にぼかす処理を施す方法が考えられる。

おそらく、Googleマップのストリートビューで用いられているような、ナンバープレートや顔を不鮮明にするソフトウェアを活用できるだろう。こうした対策は、チケットが複製されないよう販売者を保護し、Webサイトから詐欺師を締め出すのに役立つ。

詐欺の被害に遭わないために

こうした詐欺の被害に遭わないための最良の方法は、購入元の販売者について調べてみることだ。特に、人気のあるライブやフェス、イベントの場合、売買サイトの利用は避けてほしい。チケットの利用規約や配送・返品ポリシーにも注意が必要だ。詐欺師は第三者になりすまして人を騙すプロであるため、販売者が本人であるかしっかりと確認することが肝要だ。仮に一生に一度のチケットが手に入るとしても、舞い上がりすぎて安易に料金を支払わないようにしたい。

今後のチケット詐欺は?

バーコードは古くから使われている技術であり、日常生活に欠かせないものだ。小売店やスーパーの日常業務を効率化し、倉庫にある商品を管理するのに役立っている。

しかし、バーコードやQRコードは今後、大きく変わっていくかもしれない。コード自体が目に見えないようになる可能性さえある。損傷したバーコードはその機能を失ってしまうが、目に見えないバーコードは何度でも包装に印字できるからだ(専用のスキャナーで照射したときだけ、可視化される特殊な紫外線インクを使って包装に印刷する)。小売業者は高度なスキャン技術により、エラーを減らし、より早く商品の価格や場所を知ることができるようになる。

また、暗号化機能を持ち、即座に認証ができるバーコードやQRコードも増えてきた。複製されたコードを識別でき、安全性を高められる。あらゆる商品を高度な方法で偽造する詐欺師に対しては、暗号化されたバーコードが有効だ。加えて、ブロックチェーンに紐づけられたバーコードも考えられる。現在問題となっているコードの複製に対し、新たなセキュリティ対策となり、偽のチケットや複数回販売されるチケットの問題を回避できるようになるかもしれないのだ。

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