ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、加速する企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)

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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、企業は迅速な対応と長期戦に向けた準備を迫られている。サイバーセキュリティのリスクと対峙しながら準備を進めていくことでDX(デジタルトランスフォーメーション)は加速していくのだろうか。いくつかの事例をもとに考察していく。

この記事は、ESETが運営するマルウェアやセキュリティに関する情報サイト「Welivesecurity」の記事を翻訳したものである。

ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、加速する企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)

現在、テクノロジー業界ではさまざまなバズワードが生み出されている。その一つが「DX」だ。多くの企業が躍起になって進めようとしているものの、通常の業務遂行と並行して進めることは容易ではない。しかし、テクノロジーを活用して価値の提供方法や運用方法を抜本的に作り変え、ビジネスモデルの変革に成功した企業がある。いくつか事例を紹介しよう。

その代表例はマイクロソフト社だ。サトヤ・ナデラ(Satya Nadella)氏のCEO就任後、10年近くほぼ横ばいだった株価が約3倍となった。チームが協力し合える環境を整え、未来とイノベーションに焦点を当てたことで、90年代から代わり映えのしない製品の提供を続けるIT企業から、ビジネスの最先端企業へ返り咲いたのだ。同社は彼が就任した時点で、すでに12万人以上の従業員を抱えていた。大組織の文化を変えるのは並大抵のことではなかっただろう。

ビジネスモデルを変更するのは一筋縄ではいかず、相当な勇気と未来を見据えた強いリーダーシップが必要になる。実現のために重要なのは下記の4つだ。

  • オンプレミス型のシステムからハイブリッドクラウドへの移行
  • 最新の財務ソフトウェアや運用管理ソフトウェアの導入
  • テクノロジーを使った顧客体験価値の向上
  • 今よりもダイナミックで柔軟な職場環境

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大を抑え込むために、各国ではロックダウン措置が行われ「テレワーク」 が推奨されている。必要に迫られて、テクノロジーによる代替策を採用した企業も数多くある。今までのビジネスモデルから脱却したことはDXへの第一歩を踏み出したといえるだろう。

政府がロックダウンを解除した後も、企業はこのチャンスにDXを進められるだろうか。それとも、以前に戻るのだろうか。

サイバーセキュリティとの対峙方法

今後もDXを進めていくならば、サイバーセキュリティと対峙する必要がある。先日、私(Tony Anscombe)はアルゼンチンで開催されたセキュリティカンファレンスSegurinfoにおいて、プレゼンテーションを行った。その中で、変革のチャンスを見逃してはならないことと、セキュリティの重要性を伝えた。今回のパンデミックにより世界中の企業がデータやネットワークへの接続、ビデオ会議コラボレーションツール、クラウドサービスなどのテクノロジーを用いて働き方改革を推進している。iProUPのデータによると、アルゼンチンではロックダウン以前に、テレワークをある程度取り入れていた労働者は16%、常にテレワークをしていたのは3%以下にとどまった。一方で、米国では前者が43%、後者が3.6%であった。常時テレワークをしている比率こそほぼ同率ながら、米国ではアルゼンチンよりもDXが進んでおり、働き方も柔軟であることがこの調査からもわかる。

柔軟な働き方を実現することはDXがもたらすメリットの一つだが、その実現には適切にセキュリティを担保しながら導入する必要がある。使用するデバイスは、データの盗難や改ざんといったさまざまなリスクから保護されなければならない。少なくとも、ハードディスクの暗号化や強力な多要素認証の利用、VPNなどの対策は最低限必要だろう。テレワークで使うアプリケーションやツールは、顧客データや企業の機密情報を保護できるように入念にセキュリティ機能を設定しなければならない。従業員はフィッシングビジネスメール詐欺にこれまで以上に注意しなければならないだろう。テレワーカーは攻撃者のターゲットになりやすいからだ。

当然ながら、テレワークにおいてセキュリティを維持するために考慮しなければならないことは他にも数多くある。新型コロナウイルスの感染拡大フェーズでは、企業は迅速に対応することが求められた。すなわち、セキュリティ対策を十分に考慮せず、速やかにテレワークや、遠隔接続サービスを提供する新システムを導入することを優先して対応した。事態の収束後、元の状態に戻すのは非常に簡単だ。戻してしまえば、テレワークは過去の思い出の一つとなるだろう。しかし、実際はパンデミック下において世界中の企業はDXを決断し、加速させている。企業は過去に立ち戻るのではなく、先を見据えてビジネスを再構築し、従業員の柔軟な働き方を模索していかなければならない。

ある地方の小さなスポーツジムの事例を一つ紹介する。このジムではグループレッスンとパーソナルトレーニングを提供している。「外出禁止令」によって対面レッスンの中止を余儀なくされ、事業継続にはこれまでと異なる方法でサービスを提供する必要に迫られた。そこで、パーソナルとグループの両レッスンでオンラインのサービス提供をはじめたのだ。機器のレンタルなどといった対応も必要となったが、顧客は自宅にいながら以前と同じレッスンを受けられるようになった。

変革のドアは開かれた

対面レッスンが再開され機器もジムに返却されれば、以前の日常に戻るだけだ。はたしてその必要があるだろうか? 「外出禁止令」が発令される前の状況に戻るのは簡単だ。しかし、これは大きなチャンスと捉えることもできる。今後はオンラインと対面式を組み合わせたサービスの提供を検討することもできる。顧客にとっては、旅行時や対面でのサービスを受けられない場合に便利なものとなるだろう。対面でのサービス提供に限定されず、非同期型のオンラインレッスンも受講できるなら、スケジュールが合わないからといってレッスンを欠席する必要もない。暫定的に採用されたオンラインレッスンを正式なサービスとするには、より柔軟で強固なシステムとして改修・拡張する必要があるかもしれない。

機器を返却しなければならないという問題を踏まえ、まったく新しいビジネスを生み出してもよい。コロナ収束後は機器を顧客にリースするのだ。機器のリースを管理するには、信用評価や月額制 (サブスクリプション契約)といった新しいシステムが必要になるだろう。ビジネスモデルの変革を実現した企業には「サブスクリプション」という共通項がある。この仕組みにより企業は収益予測が可能となり、長期的な観点から投資を判断できる。

パンデミックによって、私たちは急な対応を余儀なくされた。しかし、この変化はDXへの大きなチャンスでもある。サービスの提供方法や働き方をより柔軟に変革することで、新たな収益機会への道が開かれるはずだ。

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