スマホのトラブルから子どもを守るためにペアレンタルコントロールを学ぼう

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通学する子どもの年次変更の際などに、キッズ携帯からスマートフォン(以下、スマホ)への乗り換えを検討する保護者は少なくないはずだ。スマホは便利な反面、いくつかの不安もつきまとう。事実、インターネットの犯罪に子どもが巻き込まれる事件はメディアでも頻繁に報道されている。そこで、この記事では子どもにスマホを適切に利用させるための機能である「ペアレンタルコントロール」についての詳細や活用方法などを解説していく。

スマホのトラブルから子どもを守るためにペアレンタルコントロールを学ぼう

子どもとスマートフォン

2008年にiPhoneが登場してから12年が経過し、今やスマホは子どもたちの間にも浸透しつつある。令和2年3月に発表された内閣府の調査「令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」では、小学生のスマホ利用率は37.6%、中学生では65.6%だった。平成30年度の同調査では小学で34.8%、中学生では62.6%であり、子どものスマホ利用率は着実に増加していることがわかる。

インターネットは私たちの暮らしの利便性を高めてくれるが、同時に危険もつきまとう。昨今、ネットを介して子どもが犯罪に巻き込まれるケースは少なくない。その被害は年々増加しており、警視庁の統計によると平成27年度では1,745人だった。内訳を見ると、児童売春や児童ポルノなどが過半数を占める。この結果から犯罪者は、金銭より子ども自身に狙いを定めていることが推測できる。

スマホにはコミュニケーションツールとして、また学校生活を円滑にするためのツールというメリットがある。反面、利用によるトラブルや依存などスマホを持たせるにあたって不安を感じる保護者も多い。

子どものスマホ利用を安全にするための機能として「ペアレンタルコントロール」がある。キッズ携帯を卒業し、スマホを持たせる場合、ペアレンタルコントロールを活用すれば安全性を高められ利用に際する不安も大幅に緩和できる。

ペアレンタルコントロールとは

ペアレンタルコントロールとは、スマホやパソコンなど子どもが利用するIT機器を保護者が管理するための機能だ。ペアレンタルコントロールを使えば、子どものWebサイトの閲覧制限やアプリの利用制限を設定することもできる。ここではセキュリティソフトESETの「ESET Parental Control for Android(以下、EPC)」を例に、その機能を説明する。

モニタリング

ペアレンタルコントロールは子どもに持たせたスマホの利用時間やその時間帯、利用しているアプリやWebの閲覧履歴などをダッシュボード画面上(図1)でモニタリングすることができる。モニタリングは保護者のスマホだけでなくパソコンで行うことも可能だ。

図1: モニタリングのダッシュボード画面

図1: モニタリングのダッシュボード画面

不適切なWebサイトのブロック

Webガード機能(図2)でインターネット上の不適切なWebサイトをブロックし、Googleなどの検索結果にもそれらを表示させないようにできる。子どもの年齢ごとの推奨設定があらかじめ用意されているので簡単だ。また、図3のようにWebサイトのカテゴリごとに細かく表示も設定できる。

図2: Webブロックの設定画面

図2: Webブロックの設定画面

図3: Webサイトカテゴリの設定画面

図3: Webサイトカテゴリの設定画面

インターネットには子どもが見るにはふさわしくないWebサイトが多数ある。不適切と設定されたWebサイトに子どもがアクセスすると、ブロック機能が働くのと並行して保護者のスマホ画面に通知される。また、子どもが保護者に対し閲覧許可を申請することもできる。

アプリの利用制限

インストールしたアプリを「適切」、「不適切」、「ゲーム」と分類して、不適切と設定したアプリの利用自体を制限、あるいは利用時間の制限が可能だ。また、レポート機能により、アプリごとの利用時間を確認することもできる。子どもがやむを得ない事情でゲームアプリの利用延長を希望する場合には、保護者にアプリの延長許可を求められる機能もあり、子どもと話し合いをしながら柔軟に応じるような使い方もできる。

図4: アプリごとの分類画面

図4: アプリごとの分類画面

図5: アプリの利用制限、時間設定の画面

図5: アプリの利用制限、時間設定の画面

位置情報の確認

スマホのGPSを利用して子どもの位置情報を確認することができる。また、ESETのEPCの「ゾーン」機能ではあらかじめ特定のエリアをゾーンとして設定できる。たとえば自宅や学校、駅など通学時に通過するポイントをゾーンとして設定すれば、そのエリアへの出入りをプッシュ通知で受け取れる。この機能があればGPSを常時監視することなく、子どもの安全を確認できる。

図6: EPCのゾーン設定画面

図6: EPCのゾーン設定画面

ペアレンタルコントロールの活用法

ペアレンタルコントロールを導入することで、子どものスマホ利用を安全かつ適正にする効果が期待できる。具体的な活用法を紹介する。

不適切なWebサイトの閲覧

アダルトや暴力的表現など、インターネット上には子どもにとって好ましくない情報が至るところに存在する。こうした子どもの教育にとって悪影響を及ぼす可能性があるWebサイトの閲覧をペアレンタルコントロールでは制限、ブロックできる。こうした不適切なWebサイトでは詐欺などの事件も頻発しており、そのような被害から子どもを守ることにもつながる。

ゲームのやりすぎ

ペアレンタルコントロールを利用することで、ゲームのやりすぎも抑制できる。近年問題視されている、子どものスマホゲーム依存に代表されるように、スマホでは無料のゲームが多数存在し、ダウンロードと簡単な登録で遊べてしまう。ゲーム依存は健全な成長を阻害する可能性も懸念される上に、「ガチャ」などで多額の請求が発生して、後々になって親が困惑するケースも見られる。

ゲーム機本体とコントローラーがある家庭用ゲーム機と違い、スマホゲームは一見しただけでは利用状況がわからない。ペアレンタルコントロールはスマホのゲーム利用をモニタリングでき、利用時間に制限を設けることができるため、利用状況をチェックしながら、家庭内でしっかり話し合い、適切なルールを設けるようにしたい。

動画の見すぎ

ペアレンタルコントロールではYouTubeの利用制限もできる。将来なりたい職業の上位にYouTuberがランクインするなど、スマホでYouTubeを視聴したいと望む子どもは少なくない。しかし、YouTubeでは不適切な内容を含む動画も少なからずアップされている。また、YouTube以外の動画アプリなどには不適切な表現を含む、あるいは安全性が担保されていないのも数多くある。子どもの年齢や成長に合わせて幼い頃は一定の利用制限を設けるか、テレビなど視聴内容が把握できる端末で視聴させるなどの工夫が必要だろう。

出会い系やコミュニティサイトへのアクセス

ペアレンタルコントロールではYouTubeの利用制限もできる。将来なりたい職業の上位にYouTuberがランクインするなど、スマホでYouTubeを視聴したいと望む子どもは少なくない。しかし、YouTubeでは不適切な内容を含む動画も少なからずアップされている。また、YouTube以外の動画アプリなどには不適切な表現を含む、あるいは安全性が担保されていないのも数多くある。子どもの年齢や成長に合わせて幼い頃は一定の利用制限を設けるか、テレビなど視聴内容が把握できる端末で視聴させるなどの工夫が必要だろう。

Twitter、Instagram、Facebookはいずれも利用規約上、13歳未満は利用できない。これらのSNSは少なくとも小学生の間はブロックしておくべきだろう。その後、利用を解禁したとしても利用時間などをペアレンタルコントロールでモニタリングしておくといい。子どもの様子とSNS利用を見比べ、気になる点があれば話を聞く機会を設けるといった対処も講じることができる。

LINE利用時のトラブル

ペアレンタルコントロールではLINEのトーク内容までは見られないものの、利用時間のモニタリングはできる。LINEは利用者も多く、日常のコミュニケーションツールとして使わせたいと思う保護者も多いだろう。しかし、未読や既読、グループなどLINE独特の使い方は初心者の子どもにとっては難しいという側面もある。

LINEによってネットいじめの被害に巻き込まれるケースも少なくない。また、自分の子どもが加害者になってしまう可能性もある。LINEを利用させる場合は、ペアレンタルコントロールで利用時間をモニタリングし、急激な利用の増加などがないかチェックしておきたい。

登下校時などの不適切な行動

EPCのゾーン機能を活用すれば、GPSを使って子どもの位置情報を効率よく把握できる。登下校時などの子どもの誘拐事件もしばしば報道されている。四六時中、GPSを眺めているわけにもいかないが、EPCのゾーン機能であれば自宅や学校、通学時の駅などあらかじめ設定したゾーンに子どもが到達するとプッシュ通知で知らせてくれるので、安心できるだろう。

利用のルールを設定する

子どもにスマホを持たせる際には適切なルールを家庭内で設けることが大切だ。お互いが納得した上でルールを運用していくためには、その必要性を正しく子どもに理解させ、家族全体でルールを守ることが重要だ。子どもが幼い間は、ルールを守ることができたら褒めるといったコミュニケーションも大切にしたい。参考例として、内閣府がリーフレットで紹介しているルールの一部を掲載する。こちらは幼児や児童が対象だ。

幼児や児童に対するルールの例

  • みたい、あそびたいときは、お父さん・お母さんにかくにんします。
  • あそんでいいのは1日〇〇ふんまで。
  • 自分にあったゲームやアプリか、お父さん・お母さんとかくにんしてから、あそびます。
  • おふとんにはいる前は、つかうのをやめます。
  • ごはんの時間は、つかいません。
  • ひとがお話しているときは、つかいません。

また、政府広報オンラインでは下記のようなルールも紹介されている。こちらは主に中学生以上の生徒を対象としている。

中学生以上のルールの例

  • 接続するサイトやダウンロードするアプリは保護者に確認する。
  • 下着姿や裸の写真は撮らない、撮らせない。
  • 個人を特定される情報を書き込まない。
  • 利用料金や利用時間を決める。
  • 知らない人と電話やメール、メッセージの交換をしない。
  • 困ったことがあれば、必ず保護者にすぐに相談する。
  • 他人のID・パスワードを勝手に使わない。
  • ルールを守れなかった時のルールを決める。

以下、参考資料を紹介しておくので、一読しておきたい。

子どもがスマホを安全に利用するために

ペアレンタルコントロールは「コントロール」という言葉のために、制限や管理という側面が強調されがちだ。しかし、内閣府のリーフレットでは「使用状況の把握」という言葉が使われているように、子どもがどのように機器を利用し、またどのようなことに関心を抱いているのか、しっかりと見守る姿勢が大切だろう。

一方で、子どもは決めたルールを破る、あるいは間違ったことをしてしまうというのも常だ。その都度、家庭内で話し合いを重ね、ルールを修正したり新しいルールを設けたりすることが必要になるだろう。このようなコミュニケーションを繰り返していくことで、子どもたちのITリテラシーも高まり、その家庭にあったルールが形成されていく。

ペアレンタルコントロールの利用は、子どもの安全性の確保だけでなく、家族間のルール形成におけるコミュニケーション上でも有意義だ。セキュリティソフトとしての機能で、スマホそのもののセキュリティを高めることはもちろんのこと、家庭内で安全に正しくスマホを活用することに貢献してくれるはずだ。

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