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特集 | ビジネスやITの最新動向/技術についてセキュリティ観点からレポート

顔認証技術の今、可能性と課題とのはざまで

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IT技術のメーンステージは今、デスクトップからポータブルへ、さらに、ウェアラブルの時代へと移行している。それとともに、バイオメトリクスおよび多要素認証といった新技術が注目を集めている。特にオンライン上で活用されるデジタルIDとして最も期待されているのが顔認証技術である。

この記事は、ESETが運営するマルウェアやセキュリティに関する情報サイト「We Live Security」の記事を基に、日本向けの解説を加えて編集したものである。

顔認証技術の今、可能性と課題とのはざまで

ウェアラブル機器においては、自分の顔のデータによって認証を行うという方法が最も有効性が高いとして注目されている。以下では、顔認証のソフトウェアはどのように作動しているものなのか、また、個人情報としてどのような注意が必要か、考えてみたい。

顔認証は最新技術か?

顔認証技術は、最先端技術として華々しくトップニュースの見出しになるようなもの、というわけではない。この技術の最初の実験は1960年代にさかのぼる。ただし当時は、研究開発の進捗は遅々たるものだった。

現在の顔認証技術のソフトウェアは、緻密かつ膨大な量の計算処理がその裏側で行われており、自動的かつ洗練されたコンピューターの力よって支えられているが、初期のモデルはその大半を人間による入力に頼っており、いわば、半自動的な技術だった。

しかも、今から半世紀ほど前には顔認証はほとんど注目を集めることなく、地道な開発が行われた。当時開発に携わった人々の誰もが、顔認証ソフトが半世紀後には、セキュリティの観点(警察やセキュリティ業者、政府によって利用される)だけでなく消費者の利益(カメラで人を識別したり、パスワード保護技術として利用される)の両方において、これほど一般化するとは想像していなかったはずである。

ある調査によれば、2024年には1億2, 000万台のモバイル・ウェアラブル機器が顔認証技術を採用しているという予測もあり、ユビキタス社会の基本インフラとして定着すると捉えられている。また、マスターカードはパスワードの代わりに顔認証(自撮り)を利用すべく、すでに検証を開始している。

発展段階にて、続々と話題が

顔認証ソフトは確かに必然性が高く、すんなりと定着していくことが予想される。ただし、そのバックグラウンドで支える技術部分については、まだ端緒を切ったにすぎず、実用化、一般化への道のりはそれほど平坦なわけではない。

例えばMicrosoftは現在、Windows10の認証に顔認証ソフトを使用し始めている。また、AppleはiOSユーザーが自動的に友人を「タグ付け」して写真を共有する方法を模索していると伝えられている。さらには、FacebookとGoogleのどちらもユーザーが友人をタグ付けし、それぞれ自分自身の写真を探すのに顔認証を利用している。

その他、中国の研究者が世界初の顔認証ATMを発明しているという発表があり、世界中の30の教会が「Churchix」というソフトウェアを使用して、誰が出席しているかを判別している。

一方、ドイツの研究者は、暗闇でも動作する新しい顔認証技術を開発し、おそらく未来の顔認証は結局のところ、トム・クルーズ主演の2002年の映画「マイノリティ・リポート」がそれほど突飛でなかったことを証明することになるだろう。

今日の状況

今日の状況

近年、顔認証は主に空港の管制室、街頭および他の公共エリアのカメラに利用されている。その使用は比較的簡単である。ビデオカメラによって収集された静止画像が、ビデオ監視システムに転送され、そこで作業者が一つひとつを目視によってチェックしているのである。

作業者はその後、大量のデータの中から怪しいと思われる個人の画像をピックアップし、既存のデータベースに収められている人物との照合を行う。その際に、システムはコンピューターのアルゴリズムを使用して、目と目の間の距離や鼻の幅といった特定の顔の特徴を測定し、人を識別することを試みる。

確かに言えることは、現在においても、この作業は簡単でも単純でもないということである。膨大な数のカメラがいまだに低解像度で画像を記録しており、識別は困難を極める。さらにビデオ監視システムそのものが、光の変化、顔の表情、異なるアングルでの撮影などに十分に対応できていないのである。

2Dから3Dへ

しかし、ポジティブに開発が進んでいる分野もある。具体的には、2Dから3Dの画像処理への移行は識別の向上にかなり役立っている。現在の画像は膨大な量の追加情報をマイクロ波(=サブミリ波)レベルで収集することができる。骨構造からの眼窩、鼻と顎の周りの曲線に至るまで、全てである。これは顔の構造を再構築するのに役立ち、最終的に、より優れた、より正確な識別を可能とする。

また重要なことに、3Dモデリングは照明や角度によってあまり制限されることがない。画像は必要によって容易に3Dから2Dに変換され、キーデータや識別子を失うこともない。

顔認証が機能しない場合のために、多くのベンダーは現在、さらに識別を可能とするための支援策として、皮膚の生体認証に取り組んでいる。これは、皮膚の一部を撮影した画像を見てさらにその一部を小さなブロックに分割し、それを測定できるようになっている。このシステムは、全てのしわ、毛穴や実際の肌の質感を識別することができる。

このソフトは、顔認証ソフトだけでは不可能な双子の識別が可能だと伝えられている。とはいえ、眼鏡やサングラスを使用した場合、髪が顔に掛かった場合、照明や画像の解像度によって、十分に識別ができないという課題も残されている。

今後の課題

今後の課題

顔認証は確実に技術の向上が見られる。だが、まだクリアしなければならない課題が少なからずあるようだ。多くのベンダーが顔認証技術に取り組んでいるため、こうした技術的な難点はかなり緩和されるものの、実際の識別の効果は、大きな難問となっている。例えばBBCの2015年2月の報道によれば、英国警察は2011年のロンドン暴動で撮影した4,000人の写真から1人しか識別できなかったようである。

さらに今日では、プライバシー、セキュリティ、データの透明性といった問題もある。Google Glassのようなウェアラブル機器はプライバシーの侵害が懸念されている。また、GoogleやFacebook、TwitterなどのSNSがユーザーについての情報を収集することに対しては疑義が挟まれつつある。

米国の消費者の75%は、マーケティング目的で顔認証技術を利用している店舗で買い物をしない、という調査結果もある(First Insight)。また英国で行われた類似の調査によれば、多くの買い物客が店での顔認証を「気持ち悪い」と感じている(RichRelevance)。

セキュリティの専門家によれば、これは、データがどのように収集され、どう保存され、担保されているかについて、より透明性を高くすることが必要とされている、ということだ。加えて、近赤外線光源を利用してカメラの顔認証をブロックする技術を搭載したプライバシーバイザーグラスような取り組みは、エンドユーザーが巨大ネット企業と彼らのバイオメトリックスの使用に対し、それが適切に説明されていなければ反抗できるということを示唆している。

また、法的観点からも問題提起が行われ始めている。プライバシー保護団体である電子フロンティア財団の代理人であるジェニファー・リンチ(Jennifer Lynch)氏は、2015年7月、ブルームバーグ紙に、「顔認証データは各個人に気付かれずに収集されます。指紋の場合、各個人に気付かれずに収集されることは非常にまれなはずです」といったコメントを残している。

顔認証技術に対して推進派、反対派、いずれを支持しようと、確かなことは、この技術はすでにここにある、ということだ。多くの利点があるが、解決しなければならない課題も山積である。顔認証ソフトをめぐる論争はこれからも続く。

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