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キーワード事典 | セキュリティに関するキーワードを解説

人工知能
英語表記:AI、Artificial Intelligence

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人間がコンピューターなどを使って人間の知能と似た機能を人工的に生み出そうとする動き。20世紀後半に開発が始まり21世紀にさまざまな形で実用化が進んでいる。セキュリティソフトウェア分野においても人工知能の考えが活用されている。ESETセキュリティソフトウェアシリーズに搭載されているヒューリスティックエンジンなども、「人工知能」の考え方を基礎に開発されたものである。

 

「人工知能」が現れたのは、さほど古くはない。その開発史は、大きく3つに分けることができる。

1)1950年代 黎明期(その後「冬の時代」が……)
2)1980年代前半 エキスパートシステムの開発期(その後再び「冬の時代」が……)
3)2010年代 実用化期(今後、本格化する可能性大)

「人工知能」という言葉自体は1956年、認知科学者ジョン・マッカーシーが人間の「知能」(知識、知恵、英知)を数理論理学で表現しようとして生み出したと言われている。つまり、当初より「人工知能」は単なるデータや情報の集積ではなく、それらから導き出される「総合知」が目指されていたのである。

それゆえ第2期においては、単なる情報の集積や計算結果ではなく、専門家が研究論文において示す結論と同様の見解が出せるような「エキスパートシステム」というものが開発された。

しかしこれまでの、こうした2つの研究開発のブームはあっけなく下火になってしまう。それは、ハードウェア、データ、ソフトウェアそれぞれに足かせがあったからであり、それを第3期は次のようにクリアしつつあると言える。
 

  • ハードウェア基盤 → コンピューターの高速化 
  • データ基盤    → ビッグデータの活用 
  • ソフトウェア基盤 → ソフトウェアの普及
 

人工知能とはその名の通り、脳の構造を人工的に再現することが目標である。そのため、以下の3つの機能を併せ持つことが想定されている。

 
  • 探索
  • 知識
  • 制御
 

第一に、多くの情報の中から、正しいもの(または最善のもの、適切なもの)を探し出す機能が「探索」である。代表例はAIゲームである。

第二に、人間が出す質問(または回答を求めている問い)に絶妙に答えることができる機能が「知識」である。代表例として「Watson」を挙げることができる。

そして第三に、ある環境、ある条件の下で、アクチュエーターを適切に作動させる機能が「制御」である。代表例としてマルチコプターや自動車の「自動運転」を挙げることができる。この第三については少し詳しく説明したい。

このような形に人工知能が高度化するために大きく貢献したのが、「機械学習」(Machine Learning)である。「機械学習」とは、人間の学習方法とは異なるのだが、独特の仕組みを機械に与えることで人間と同じか、場合によっては人間以上の成果が挙げられるというものである。その典型として「深層学習」(Deep Learning)がある。

深層学習によってデータは情報へ、そして、知識へと変容する
 

「深層学習」は「機械学習」の一種であり、脳神経のように情報を活用する「ニューラル・ネットワーク」(neural network)に基づきつつも、処理階層をなくすとともに、さらに、「タグ」として働く「特徴量」というものを人間が与えるのではなく機械が自動的に抽出する。

単にデータを入力処理して終わらせるのではなく、その中にある特性や共通点、差異などを抽出し、整理し、その上で実際に物事を決めたり判別するような「知識」へと練り上げるプロセスを持っている。

例えば画像認識であれば、1枚の画像データにあるオブジェクトを判別し、その色、形状、質感やパーツなどをタグ化する(=隠れ層)とともに、その全体像として何と一致するのかといった総合的かつ全体的なまとめ方も行う。

この「深層学習」が実用的になったことによって、運輸の面では自動運転、広告や営業、セキュリティの面では顔認証、生産や建設、福祉などの面では清掃、警備、監視ロボットや介護ロボットなど、さまざまな分野での実用化が可能となりつつあるのである。

人工知能には、なんといっても人間と同等程度(もしくはそれ以上)の認識や判断、行動が求められている。その際の認識や判断に必要な技術の一つが「深層学習」であるが、そもそも認識において必要なのは、そのための情報である。

しかも情報は、一方では膨大に集積されたもの、データベースと照合するものとして求められ、また他方ではリアルタイムで状況を分析するためにも求められている。すなわち、ビッグデータとクラウド、そして、センサーの連動が、高度な人工知能において必要となってくる。

ビッグデータはクラウド上のデータベースからも端末や各地に設置されたセンサーからも情報を獲得可能
 

ビッグデータは、単にデータ量が多い、ということだけではない。データ取得がセンサー技術の進展により広範囲にわたっていること、処理速度が高速化していること、そして、クラウド化しているため、他の端末との間の連携やリアルタイムでデータが活用できることも含まれているのである。

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