暗号が登場する3つの映画作品

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サイバー空間において暗号化技術は、セキュリティを強化するためにも、逆に、セキュリティの隙間からの巧妙な攻撃を行うためにも、いずれにも利用されているのが現状である。以下では、少しでも暗号化技術になじみを持っていただこうと、暗号が登場する映画を3作品紹介する。

この記事は、ESETが運営するマルウェアやセキュリティに関する情報サイト「Welivesecurity」の記事を翻訳したものである。

暗号が登場する3つの映画作品

暗号は情報セキュリティの根幹技術の一つである。それはメッセージを暗号化(エンコード)してその内容が読解や改変されたり、あるいはその権利のない第三者によって傍受されたりしないようにするために利用される。こうして、暗号化によって情報は安全であるための鍵となる3つの要件を満たすのである。その3要件とは、信頼性、保全性、利便性である。

暗号化の方法は私たちの日常生活においてあらゆる場面で用いられている。例えば、メールを送る場面を考えてみよう。もしそのメールのプロバイダーが暗号化技術を用いていなければ、メールの内容が途中で盗み取られ、見ず知らずの人に読まれてしまいかねない。

別の例を見てみよう。広く普及しているスマートフォン向けのインスタントメッセンジャーアプリ「WhatsApp」を使ってメッセージを送る場合はどうだろうか。このアプリもほかのアプリ同様、暗号を用いている。実のところ、それぞれの端末だけが内容を理解できるようなエンド・トゥ・エンドの暗号化の導入は2016年に完了した。このことはつまり、今や送り手と受け手以外は交信内容を読むことができなくなった、ということを意味する。

「WhatsApp」の共同創設者が2016年4月にこう述べている。「メッセージの内容は誰も読むことができません。サイバー犯罪者であっても、善意のハッカーであっても、強圧的な政府であっても、たとえ私たちWhatsAppであってもです。エンド・トゥ・エンドの暗号化のおかげで、WhatsAppを通じたコミュニケーションのプライバシーはしっかりと守られています。そのため、あたかも顔を突き合わせて会話を行っているかのようにコミュニケーションがとれるのです」

暗号化という方法は新しいもののように見えるかもしれないが、そのコンセプトは文字通り1,000年以上前昔から存在していたものだ。最初にどのようにして「ヒエログリフ」が解読されたのか、ご存じだろうか。ロゼッタストーンはエジプトの皇帝が自国の言語エジプト語とギリシャ語で出した勅令が刻まれた石片であるが、ギリシャ語は当時よく知られた言語であったため、このロゼッタストーンがメッセージをエジプト語に翻訳するのに用いられ、復号の鍵の役割を果たしていたのであった。この石片が文明史における、また言語と暗号の歴史の重要な出来事と目されているのはそのためである。

しかし、お察しの通り、ロゼッタストーンがその唯一のものというわけではない。

今日、暗号はその性質上決して目立ちはしないが、一般化している。この技術の変遷をたどろうとすれば文明史そのものをさかのぼることになるが、そればかりでなく、とりわけスパイと諜報機関に深く関係していることが注目される。このことを念頭に置きつつ、以下では暗号化が映画制作の「鍵」として特徴付けられている3つの作品を紹介する。

1 イミテーション・ゲーム(The Imitation Game)

2014年に封切られた「イミテーション・ゲーム」は、アラン・チューリングを主人公とした物語である。チューリングは20世紀の英国の先駆的数学者であり、論理学者である。そして何より、コンピューターサイエンスという学問の新分野を発展させるのに寄与した人物である。舞台は英国。諜報機関が彼を、ある特別な任務のために雇うことになる。暗号機「エニグマ」がいかにして作動するのかを解明しようというのだ。そうすれば英国はナチスが利用しているメッセ―ジ暗号化システムを掌握できるからである。

映画では、その機械を分析するためにチューリングが数学者と暗号学者たちからなるチームをどのように組織したのかが描写される。その暗号機は同盟国側にとって全くの謎であったのだ。ハードワークをこなし、いくらかの運もあって、チューリングと仲間たちはその機械がいかに作動するかを明らかにし、ドイツ側の交信の傍受に成功する。その後は歴史が示す通りである。チューリングの仕事はドイツ側の優位をひっくり返す「鍵」となり、偉大な業績として永久に語り継がれることになる。それは第二次世界大戦で同盟国側を勝利に導くのに大きな役割を担ったのである。

2 ゾディアック(Zodiac)

ゾディアック」は2007年のデヴィッド・フィンチャー監督によるミステリー(スリラーと言うべきか)である。この話は殺人鬼「ゾディアック」(犯人が自分自身でそう名乗った)として知られる米国の悪名高き連続殺人事件を元にしている。この殺人鬼は1960年代から1970年代にかけてカルフォルニア州サンフランシスコ界隈で活発に凶行に及ぶ。しかし彼が有名になるのは第二の殺人以降である。

ゾディアックは有名になることに飢えていて新聞社の動向をうかがっていた。手始めに彼はサンフランシスコの主立った新聞社に手紙を書いて自分の来歴を披露し、暗号文を送り付けてきた。しかもヒントは何もない。それはあたかもゲームのようであり、この暗号文が異なった場所から、そして異なったメディアに送られていること、そしてこの一連の暗号メッセージが自分の正体を示している、とこの殺人鬼は説いていた。彼はまた新聞紙のトップページにこのメッセージを告示することを要求してきた。そうしなければ、さらなる犯行に及ぶ、と脅しながら。

その年、この最初の手紙の後も、殺人鬼ゾディアックは手紙と暗号メッセージを送り付け、警察当局をあざけり続けていた。徹底した捜査が実施されたが、殺人鬼は決して見つかることはなかった。今日でも、この事件は米国の未解決事件の中で最もセンセーショナルな事件の一つであり続けている。

3 ダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)

ダ・ヴィンチ・コード」は同名のダン・ブラウンの小説を原作としているが、原作が評判だっただけあって、2006年で最も期待された映画の一つだった。原作は8,000万部以上のヒット作で、44カ国語に翻訳されている。ここで重要なことは、そのストーリーが宗教図像学および宗教象徴学の教授ロバート・ラングドンについての物語だということだ。ルーヴル美術館で事件が起こる。その真相を解明しなければいけない事態に彼は巻き込まれていく。

問題の核心に迫るために、ラングドンは残されたメッセージの暗号を解読し、謎を解く必要があった。それが解ければ殺人犯を特定できる次の手掛かりに進めるのだ。しかし彼にも分からないことがあった。彼の行っている調査は、結果として、歴史上最大のミステリーの一つ(あるいは伝説と言ってもいい)である「聖杯伝説」(*)の謎解きにまで彼を導くことになるということである。

* 編集部注 ヨーロッパに古くから伝わる伝承で、「聖杯」が血の正統性を証明するシンボルとなっている。起源はイエス・キリストの血を受けた杯とされている。

映画全編を通して、その幾重にも重なった謎を解くのに、教授が記号学の知識をいかに活用するかということを、ここでは見ることができる。最もスリリングな場面は恐らく、彼が「クリプテックス」を見つける場面だ。それはこれぞ「暗号器」といった代物で、恐らくレオナルド・ダ・ヴィンチのデザインを元にして作られたものだ。

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以上見てきたように、暗号のコンセプトは歴史の中で、またフィクションの中で数々の興味深い方法で利用されてきた。ここで取り上げた3つの映画は暗号という存在にますます光を当て、親しみやすいものにすることに貢献している多くの例のうちのほんの一部にすぎない。暗号はほんの一部の人のために使われてきたが、デジタル時代の今日、それはこの相互に接続された世界の中で、ユーザーとしての私たちの情報を守るための「鍵」となっているのである。

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